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黒い稲妻とキャッスルロックの庭園

3人の管理人による、自作小説ブログ。   ○Tarkus…月・金を担当  ○黒い稲妻…火・日を担当  ○イット…水・土を担当
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「鎧と剣と光と獣と」 2.始まりの風

粕切諒斗(かすぎり りょうと)は星笠学園に通う一年生である。きわめて端整な顔立ちをしているので、生徒、教師を問わず女性に人気がある。当然、男性には嫌われている上に、いつでも不機嫌そうな顔をしているので、敵が増える一方だった。女子生徒たちにとってはそんなところもたまらないようだが。
 「たくっ、貴重な昼休みだっていうのに・・・・・・」ただでさえふてぶてしい面を一層しかめて屋上へと向かった。体育会系の上級生から呼び出しをくらったのだ。ブツブツ言いながら階段を上っている途中で携帯が鳴った。
 「聡か?例のこと分かったのかよ?」第一声とは思えない不機嫌な声を出した。
 「分からないと電話しちゃいけないのかよー?つれないなぁー、諒斗クンはー」聡と呼ばれる電話の相手は、対照的な陽気な声を出した。
 諒斗は電話を切ろうとした、聡はそれを感じたのか、あわてて諒斗をなだめた。
 「お、おい、待てって!ホントに分かったんだよ!」
 「だったら手短に言え。」諒斗の声に一層、不機嫌さが増した。
 「まぁ、まず賀東と幕ノ内は確実だな、さっそく両家の当主が校長に会いにいったらしい」
 「やっぱりか・・・・・・」諒斗はこぶしを握り締めた、不機嫌な顔が一転、覚悟を決めたような顔に変わった。
 「平野は・・・・・・?」諒斗はさらに聡に問いただした。
 「確証はないけど、あの家のパワフルな女当主が息子を入学させないわけないと思うぜ?」
 「そうか・・・・・・有難う、聡」
 「いいってことよ、我が友よ」二人の会話が終わった。
 数分後、諒斗は屋上で聞くに見苦しいいちゃもんをつけてきた上級生五人を十数秒で片付けると、生徒手帳に挟んである写真を眺めた、そこには幼い頃の自分と、その横で満面の笑みを浮かべる男の子が写っていた。
 「お前はどうすんだ?秋志郎・・・・・・」諒斗は写真の中の笑顔の男の子に話しかけた、その顔は友人の聡すら見たことが無い、嬉しさと悲しさを分けた、複雑な顔だった。


1.暗い家へ << 目次へ >> 3.出現
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天使の形而上学-1.目覚めの朝-

 月姫たちは天使の加護を得ることで、各々エーテルの特性と役割を知る。五つの種類を持つエーテルはその組み合わせ次第で派生していく。そのなかで最も貴い教養を必要とするのが「純化」だ。それは天使の肉体を得ることで人間がその聖性と予言を現世へともたらす。月姫はその至高き存在へと深化するため、その身を日々の修養へと費やす。
 いつかやってくるこの世の終わり、「聖霊の時代」への準備段階だ。


「鎧と剣と光と獣と」 1.暗い家

 「あ、お帰り、圭介」 玄関に姉の唯がいた。
 「どうしたの、服が泥だらけじゃない」
 「なんでもないよ、転んだだけ」 圭介は二階の自分の部屋に向かった。
 自分の部屋に行く前に、兄の部屋と父の部屋の前を通った。二人は部屋にいない、いつものことである。
 草薙家は五人家族。父幸一、母美奈、長男丈、長女唯、次男圭介となっている。しかし、圭介は本当は草薙家の人間ではない、三年前のある日、偶然に知ってしまった。知りたくなかった現実を・・・・・・
 現実を知った後、圭介は家族を避け始めた。もちろん、家族は何とかしようと試みたが圭介は心を閉ざしたままだった。
 幸一は地質学を教える大学教授、丈は漫画家である。二人とも仕事が順調で家にいない、その事もまた、圭介の落ち込みに拍車をかけた。
 中一の冬を過ぎてから圭介は外で喧嘩に明け暮れるようになった、よその学校の生徒との喧嘩がほとんどなので担任は知らなかった。しかし、家族は気づいていた、ここ二、三年で一体、圭介は何回「転んだ」と言っただろうか?
 「何やってんだろ・・・・・・」 圭介はベッドに寝転んだ、先程、甲殻男に殴られた腹がまだ痛む、それもそのはず、あの後圭介は一時間も気を失っていたのだ、しかし、今はそんなことはどうでもよかった、
 「アイツはいったい誰なんだ?どうして俺の名前を知ってたんだ?」 痛みを忘れようとしながら、圭介は眠りについた・・・・・・


 一階で電話が鳴った。唯が取った。
 「はい、草薙でございます」
 「白御風と申します。幸一さんはいらっしゃいますかな?」
 唯はあやうく電話を落としそうになった、来るべき時が来てしまった・・・・・・


天使の形而上学-1.目覚めの朝-

 私立ヨアヒム学園の教義は特殊で、いわゆる一般教科については全く教えていない。教義の理念、天使の種類と役割と階級、古代語の学習と古典文書の読解、エーテルの詳細と使役法、天上界の構造と機能、前世・現世・来世のサイクル……。そういったものがヨアヒム学園の教えである。
 生徒は古代語を勉強し、古文書を読み解き理念を得る、それから世界の仕組み、現在自分たちの住む世界が天上界の一部に過ぎないと学ぶ。そしてそれを成り立たせている物質・エーテルの作用を勉強してその技術を実践する。
 エーテルはこの世界において、経済、政治、科学、環境、思想、歴史、全てを統制する。


世界を変える男 ~序章~

 未来の地球。
 人類が自分達の手で創った一番最後のシステム『Digital Life』。脳をこのシステムとシンクロさせる事によって、デジタルでバーチャルワールドに入り込んでいる錯覚に陥れるのだ。21世紀に入ってからは物事のデジタル化が止まる事がなかったが、思考回路のデジタル化の成功によってついに"人間”自体がデジタルになったのだ。
 人類は自らが創ったロボット達に全ての事を任せ、ひたすら自分の趣味や娯楽の為に生涯を費やしていた。それも、それは自分の体ではなく、デジタル世界のアバターの体でだ。つまり今の時代、人間は生まれてから死ぬまで一度も現実の世界で生活する事はないのだ。
 栄養は点滴で補給しているが、それ等を管理しているのはロボットだ。排泄から生殖活動まで、人間が生き残る為に必要な"仕事"は全てロボットが行っているのだ。
 ちなみにロボットの反乱は絶対に起こりえない。何故なら、ロボットと言っても、少し前の時代まであった家庭用ロボットのように自分で物事を分析しながら考えて行動するタイプとは違い、一定時間ごとに一定の動作をしたり、Digital Life からの人間の命令で一定の動作をするような、原始的なロボットだからだ。つまり、自分から進歩等しないのだ。
 変わる事のないロボットに、それ等に管理されている何もしない――実際はデジタルの世界で動いている――人類。
 そう、人類は自らの進化を止めたのだ。

 その世界で生きる――生きるという表現が正しいかはわからないが――少年が一人。
 彼の名前はタツヤ・ムラカミ。日系人の19歳だ。
 彼の部屋の中央には巨大なスクリーンがそびえ立ち、その周りは膨大な量のDVDで溢れている。ちなみに何故DVDかと言うのは、完全に彼の趣味の範囲の話になってくる。彼は旧世紀の映画というものに興味があるのだ。
 この世界では決まりはない。誰もがその世界の創造者であって、世界はその人の色で創られているのだ。
 彼はそのDVDの内の一つに今日の"冒険の舞台”を絞込み、おもむろにその映画をスクリーンに流し始めた。そして、ソファに座り、暫く映像を観て楽しんだ彼は、躊躇う事なくスクリーンの中へと入っていった。
 そう、映画の世界へ入り込むのが、彼の Digital Life なのだ。

 


目次へ >> 1.出会い

「鎧と剣と光と獣と」~プロローグ~

 草薙圭介(くさなぎけいすけ)の目の前に現れたのはまるで特撮アニメに出てくる怪人のようだった。しかし、動物と人を掛け合わせた、所謂「○○男」のようなその他大勢のようなものではなく、物語後半に現れ、主人公を苦しめる中ボス、あるいは幹部と言ったほうがいいかもしれない、どこか毒々しい格好よさがあった。
 上から下までゴツゴツした濃紺の皮膚、いや甲殻のようなものに覆われ、頭には三本の角、肩や腰には太い棘のようなものが生えている。
 「な、何だよこれは・・・・・・」 圭介は夢でも見ているのかと思った。
 「ナンテコトヲ・・・・・・ヤメナサイ」 甲殻男は低く、恐ろしい声を出した。
 先程まで、圭介は喧嘩を売ってきたヤンキーを打ち倒したところだった。そのヤンキーはいま地面に転がっている、今まさに圭介は止めをさそうとしていた、そこにこの甲殻男が現れたのだ。
 圭介と甲殻男は向かい合った、隙を見てヤンキーはこっそり逃げ出した。
 「イエニカエリナサイ」
 「何だと・・・・・・」 圭介は甲殻男を睨んだ。
 突如現れた謎の男に恐れより苛立ちを覚えた圭介は拳を握り、飛び掛った。倒せる自信があった、不思議とそんな気がした・・・・・・。
 「!・・・・・・」
 圭介は一瞬何が起こったか分からなかった、目の前がぶれた、今まで体験したことの無い衝撃が腹に来た。体勢が前かがみになったと思ったら、その格好のまま後ろに飛んでいた。その後、アスファルトに背中から叩きつけられた。
 「あっ!ぐぅ・・・・・・」
 激しい痛みで薄れ行く意識の中、圭介は甲殻男の低い声を確かに聞いた。
 「ワタシハカナシイヨ、ケイスケ・・・・・・」
 そして世界が闇に染まった。

 


目次へ >> 1.暗い家

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