信城月姫(しんじょうつきひめ)は私立ヨアヒム学園の高校生だった。「彼」は名前だけなら、女子を連想させるくらいで、表情も幼げで中性的で、周囲からもよく女性らしいと呼ばれていた。
月姫にはとりわけ信仰はなかったが、幼いころから占星術や神話を絵本でよく読み、それからというもの神話やオカルトの書物を嗜むことが趣味になった。つまり、形而上的なものへの関心は依然としてあったのだ。月姫の家庭はいたって穏やかで、家族間でのもめごともない暮らしだった。ただ、幼いころ父を亡くしており、月姫は母子家庭で育った。そのせいなのか、月姫には母方の性格の影響が濃かった。
月姫の趣味は就寝中に見た夢を日記へと記録することだった。それは不思議と物語をともなっており、彼が教養としてかじったグノーシス、カバラ、新プラトン主義の影響が濃く見られる世界観だった。
PR