「十二家が星笠学園を設立してから五年後のある日、十二家の中では二番目に力のあった波佐間家が、突然、礼羽家を傘下に入れて連盟から脱退したの」
「傘下?人に従うようなやつには見えなかったけど?」 圭介は先ほどの漆黒の鎧の発言を思い出した。
「当時、礼羽家は事業の失敗が続いて、波佐間家におんぶ抱っこだったの、波佐間家が脱退した理由は分からないけど、一説では、彼らが自分たちの司る「獣」の力の解明に成功したからではないか、と言われてるの」
「それが何で脱退の理由になるの?」
「波佐間家は昔から研究を反社会的なことに使おうと考えていたの、『鎧』や『剣』は規模の小さいものだけど、『光』や『獣』は底知れない力があると言われてて、特に『獣』は動物の生態に影響を与える力があるから、悪用されるととんでもないことになるわ」
「豚を金色にしたり、鶏が空を飛べるようになったりとか?」
「そんなことして何の意味があるの?悪用というのは、遺伝子を組み替えたり、合成したりして凶暴な未知の生物を作り出したり、バイオテロに利用したりすることよ」
「バイオテロ・・・・・・」 圭介もようやく事の重大さに気がついた。
「その後、波佐間と礼羽は外国にわたって、かなり危険な邪教衆と共同研究していたらしいの」
「じゃきょう?魔術か何か?」
「うん、でも言っておくけど光剛石の力はあくまでも科学と地質学の領域で、魔術的な要素は何もないのよ?」
圭介はしばらく考え込んでいたが、やがてあることに気づいた。
「さっきの話で、子孫たちを研究に協力させたって・・・・・・」
「そうよ、私も丈兄さんも星笠で研究を手伝っていたわ」
「て、ことは・・・・・・」
「もちろん、あなたも草薙家の一員として星笠学園にいくのよ」
「えええ!?」
「なんてね、強制はしないわ、あなた自身が決めることよ」
今日は朝から驚きの連続だった、自分の知らない歴史と家族の姿を知ることになった、まだまだ唯に聞きたいことはたくさんあった。父や母、兄、そして自分もまた、『鎧』を纏うことができるのか?礼羽が襲ってきたのは何故?家にいて安全なのか?逃げきることはできるのか?残る十二家はどんな人たちなのか?そのほかにも様々な疑問が次から次へと浮かんできたが、何故だか星笠学園に行くことを拒否しようという考えは頭に浮かんでこなかった。
作者コメント
黒い稲妻>>イットへ
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