『まさか彼がポーカーだったなんて・・・。どうしてわかったの?』――そんな事をわざわざ聞かないでほしい。だって、そんな事は最初っからわかっていたんだから。
「クフ王の仮面」なんて、それこそ子供から大人までが知っている。
犯人の目的は仮面ではなく、財堂重盛を殺す事。それも犯人はポーカーではなく、彼を犯人に見立て上げようとした別の人間。そしてその犯人は、財堂の一人息子の財堂隆司だった。
そして――本来なら――そこへ呼び寄せられてた刑事の内の一人が連れて来た、超有名な高校生探偵・金田新一郎が事件を解決する。
しかし、無事に解決したと思わせていた所に、まさかのハプニング。
数日後、爆破現場からは、クフ王の仮面の破片すら見つからなかったとの報告が入った。
本物のポーカーが、誰も知らない間に盗み出していたのだ。予告どおりに。
金田は、後になってからポーカーが誰だかわかったが、手遅れだった。
これが、金田とポーカーの最初の出会いであり、初めて金田が解決出来なかった事件だった。
そして今――。
俺の目の前には、財堂重盛のメイドに扮していたポーカーがいる。
彼は才能ある、泥棒だ。
例え正体がばれても、絶対に焦る事はない。常にバレても逃げられるように考えているからだ。
――だが、甘かった。
彼は、メイドの服から白い煙を噴出させて、パンツ一丁の姿で飛び出していた。
多分、この後で、目に物言わぬ速さで早着替えをして逃げようと思っているのだろうが。
俺にはそんな手は通用しない。
ポーカーは、まだメイド服を脱げきれていない状態で、しかも勝ち誇った顔で固まっていた。
その状況は、本当に惨めで、見ていて腹がよじれるほど面白かった。
そう、俺は時を止められるのだ。
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