草薙圭介(くさなぎけいすけ)の目の前に現れたのはまるで特撮アニメに出てくる怪人のようだった。しかし、動物と人を掛け合わせた、所謂「○○男」のようなその他大勢のようなものではなく、物語後半に現れ、主人公を苦しめる中ボス、あるいは幹部と言ったほうがいいかもしれない、どこか毒々しい格好よさがあった。
上から下までゴツゴツした濃紺の皮膚、いや甲殻のようなものに覆われ、頭には三本の角、肩や腰には太い棘のようなものが生えている。
「な、何だよこれは・・・・・・」 圭介は夢でも見ているのかと思った。
「ナンテコトヲ・・・・・・ヤメナサイ」 甲殻男は低く、恐ろしい声を出した。
先程まで、圭介は喧嘩を売ってきたヤンキーを打ち倒したところだった。そのヤンキーはいま地面に転がっている、今まさに圭介は止めをさそうとしていた、そこにこの甲殻男が現れたのだ。
圭介と甲殻男は向かい合った、隙を見てヤンキーはこっそり逃げ出した。
「イエニカエリナサイ」
「何だと・・・・・・」 圭介は甲殻男を睨んだ。
突如現れた謎の男に恐れより苛立ちを覚えた圭介は拳を握り、飛び掛った。倒せる自信があった、不思議とそんな気がした・・・・・・。
「!・・・・・・」
圭介は一瞬何が起こったか分からなかった、目の前がぶれた、今まで体験したことの無い衝撃が腹に来た。体勢が前かがみになったと思ったら、その格好のまま後ろに飛んでいた。その後、アスファルトに背中から叩きつけられた。
「あっ!ぐぅ・・・・・・」
激しい痛みで薄れ行く意識の中、圭介は甲殻男の低い声を確かに聞いた。
「ワタシハカナシイヨ、ケイスケ・・・・・・」
そして世界が闇に染まった。
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